国宝

花井東一郎が見たかった景色とは至高の境地ではないかと思う。

技術を突き詰めていくと芸になり、更に昇華すると真境地に至る。行きつくには全てをそこに賭けなければならない。それでもその場所に行けるかどうかはわからない。天賦の才と運が必須だ。

ドラマの延長のような日本映画ばかりだが、国宝は一味違っていた。甘くて緩い箇所が無かった。3時間以上を瞬きすることなく見入った。歌舞伎を知っている人が見たらどうなんだろう?とまず思った。歌舞伎を知っている人であれば気づくこともあるだろう。

師匠に、技術を磨け、意識を極めろ、と言われたものだ。それを極めていった先の行き着いた境地とはどんなものだろう、その景色はどう見えるだろうと憧れ続けているがオレレベルでは行き着ける筈もない。限られたひと握りの人だけが行き着ける世界。それでも死ぬまでにそれが見たいとは思うが、、。

上映されて2か月以上もたつのにオレの見た映画館のその回はほぼ満席だった。また3時間、誰一人として音を立てなかった。