愛犬ラッキー、永遠に

16年前、オレの正念場の時に彼と出会う。

臨死体験というまさに絶体絶命の状況だ。頭蓋骨骨折、片目が下にズレ、右の鎖骨、肋骨4本骨折という悲惨さだ。

なんとかそこを乗り越えたので今があるわけだが、それからしばらくして縁に導かれ黒柴ラッキーはやってきた。

ドッグフードにかぶりつく姿に傷ついた身体も心も癒されたものだ。

まだ来るのかと思うほど困難が降り注ぎ、その頃のオレは月を見ながら何度も気合を入れ直した。絶対に光は射す、と言い続けた。

ラッキーはいつもオレの傍にいた。

そしてブラウンの透き通った目でオレを見ていた。

公園の芝生で走り、転げまわり、プロレスもした。晴れればデッキで昼寝をした。雨はじっと小屋にいた。雪ははしゃぎ回った。

1日2回の食事と散歩を何より楽しみにしていた。デッキから玄関先にオレが出てくるのを首を長くして待っていた。

平和主義者で野良猫や野良犬が来ると自分の小屋を使わせてやリ、コイツに飯やってくれ、と鳴いた。

晩年は失明し、耳も聞こえなくなった。それでも取り乱したのは僅か一瞬、ウォーと泣いただけだった。

運命を受け入れ、懸命に生き抜いた。最終2晩本当に苦しんだ。生と死の狭間でも凛としていた。

ラッキー、ラッキー、散歩行こうぜ!

オレは天国に行ってしまった今も彼に語りかけている。